恐怖の連帯
僕らはライオンの群れに囲まれたシマウマだ。
ぐるっと円になって外側に向かってひたすら蹴り上げていないといけない。
誰かがそれをサボったり、うまく適応できないとそこをライオンにつけ込まれてしまう。
そいつだけが脱落してライオンに襲われるだけなら、そこまでの切迫感はない。
こっちが相当数で円になって、その円が壊れないように保つことで何とか犠牲者を最小限にすることができる。
つまり、どれか一頭が円を崩して、内部にライオンの侵入を許してしまうと、あっという間に円が崩れてしまうのだ。
崩れた円をまた作り直すのは大変だ。
だから円を崩すな、とそれに集中するんだ。
それは恐怖から来る団結だ。
けれどシマウマにだって個体差がある。
体の不調でうまく蹴れないやつだっているかも知れない。
単に集団行動に合ってない、だから同じ行動をとれないやつもいるかも知れない。
それでその群れがライオンの餌食になるなら、それも運命なんだろう。
ライオンだって全頭食べ尽くすほどの食欲はないから、甚大な被害を受けたとしても絶滅することはない。
うまくライオンに見つからず生き延びるやつだっているだろう。
やられるのかやられないのかは結果論だ。
何もしなくたって、何も考えなくたって適当に過ごして何の被害も受けずに生き延びるやつだっている。
シマウマのリーダーに忠実に従い、周りを鼓舞し、細心の注意を払って群れを守ろうとする奴だってライオンに襲われたら終りだ。
要するに自分は死にたくない。
死にたくないから連帯する。
それが唯一できる方法だから。
自分の命が、家族の命が完全に保証されるなら、ライオンの群れに他のシマウマを差し出す奴だっているかも知れない。
結局、一番リスクが少ない方法というのに従ったとしても死んだらアウトなのだ。
そして、全員が同じ考えで同じ行動をする、ということは普通に考えたってこの世の中では期待できない。
あいつはバカだ。
お前がバカだ。
くだらないことを言っている。
お前がくだらない。
そんな言い合いでしかない。
ライオンの群れが行ってしまったら、どうする?
お前はバカだ、と言ってた奴と何のわだかまりもなく付き合えるかな。
多分ムリだよね。
だからこの時期に、付き合える奴と付き合えない奴がわかってしまうのかも知れない。
それが個人的な「コロナ後の世界」だったりして。
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