アイスコーヒー

夏になると急に飲み始めるアイスコーヒー。

ほうくも大好きである。

あの細長いグラスに氷と共に黒い液体が入っていて、それがとても冷たそうな感じがたまらない。

「そんなに冷たくするなよ。」

なんて言いたくなるくらいである。

ほうくはお子様なので、アイスコーヒーをブラックで飲むなんてことはしない。

ちゃんとガムシロップ（大人はガムシロなんて言うらしいぞ）も入れるし、ミルクも入れる。

あの黒い液体に、ミルクが上から不規則にじんわり広がっていく感じがますます気分を高めたりする。

最近は問答無用にストローでぐるぐるかき混ぜるため、あっという間に茶色になってしまったりするが。

アイスコーヒーと言えば喫茶店であるが、ほうくが高校生の頃なんかは喫茶店は不良の行く所だった。

初めてその不良連中、まあ今考えれば不良でもなんでもない善良な一般高校生であるが、と喫茶店に行ったとき、当たり前のように

「アイスコーヒー。」

とオーダーしていたのが実に大人に感じられた。

喫茶店なんか入って冷たいコーヒーを注文するなんて大人としか言いようがない。

ほうくが別のときに喫茶店に行ったとき、同級生がウィンナーコーヒーなんか注文して妙に大人ぶっていたのが思い出される。

「ウィンナーって言ったってウィンナーが入っているわけじゃないんだぜ。」

なんて得意げに説明してくれたがあの時間を返して欲しいくらいだ。

今考えれば喫茶店でアイスコーヒーなんか飲みながら、かの不良的善良一般高校生たちは何をしていたのだろう。

ほうくはそんな所に行くくらいならゲームセンターで腕を磨くのに忙しかったので分からない。

良くテスト期間の最終日、早く帰れる日なんかに学校の先生たちが近所の喫茶店やゲームセンターなどを見回る、なんて話があったが、みんなそんな近場でリスクを冒していたのだろうか。

ほうくは遥か遠くの千葉県内のゲームセンターでハイスコアを更新しまくっていたものだが。

やがて喫茶店に行くのがそれほど違和感がなくなってくると、みんながアイスコーヒーを頼むわけではないことがわかってきた。

意外と女性は「アイスティー」なるものを注文したりするのだ。

イメージで喫茶店とアイスコーヒーがセットになっていた頭の固かったほうくは、それでもアイスコーヒーを頼み続けた。

でも時にはクリームソーダに惹かれたりもした。

それでもアイスコーヒーを愛し続けたほうく。

一途である。

最近は喫茶店自体の数が減っていてしかも喫茶店に入るような用事もなくなってしまった。

チェーン店の有名なところは、数も限定されてきた。

くそ高い値段の有名なところは味の違いが分からないので無用に高額請求されている気になってしまうため、ちょっとコーヒーとなるとマク○ナルドに寄ったりする。

夏のくそ熱い時間帯に、冷房の効いた喫茶店に入りただただぼうっっとしていたあの頃。

今はマク○ナルドでやっすいアイスコーヒーを頼んでひたすらスマホである。

アイスコーヒーと共に人生を歩んできたほうく。

さすがにそんなことはないな。

ただ最近では甘ったるいシロップに耐える若さが失われ、何か冷たいものをと言う時にはついつい

「麦茶」

なんて言いたくなったりする。

あんなに愛したアイスコーヒー。

ほうくの中で麦茶に取って代わられようとしている。

ごめんね。