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ドライブ

昔、鬼怒川まで車で行ったことがある。

「今から鬼怒川まで行こうぜ。」
そんな電話がかかってきたのが翌日が休みの金曜か土曜の夜、もう晩飯を食べた後だった。
「なんや今から行くんか。」
なんか父親のそんな言葉を聞いた気がするので相当前だ。

電話をかけてきたその男、通称「ガッツ」もまだ独身だったからかなりの昔だ。
こいつは良く、夜中の1時とかに電話かけてきて
「今、大森のカラオケボックスにいるから来い!」
とか言ってきたものだ。

でもこういう無茶な誘いに乗るのも結構好きだったのでそこからタクシーを呼んでわざわざ大森まで行ったこともあった。
一万円以上かけて店に着くと、ガッツは椅子でぐうぐう寝ていて一緒にいた連中はそろそろ帰ろうとしていた。

そんな奴がまた急に電話をかけてきてそんなことを言ってきたのだ。
でもまたその時も行く気になった。

「何しに行くんだ?」
「夜中に下道でずうっと走って朝温泉に入ろうぜ。気持ちいいよ絶対。」

そんなわけで車で国道4号をひたすら北上することになった。
どっちの運転だったのか、もうほとんど覚えていない。
けれど独身の男二人がくだらない話を延々して車の中で大笑いしながら夜中のドライブをしたのだった。

二車線になったり一車線になったり、途中で工事中になったり、道の周囲が本当に何もない風景になったりだった。
前の車のテールランプを眺めながらくだらない話ばかりだった。
あまりにもくだらない話をしたのだろう。
何の話をしたのか全く、これっぽっちも思い出せないくらいだ。

しかし子供の頃から人を笑わせようということに一生懸命だった者同士、相手の話に大笑いし、隙をついて自分も相手を笑わせようとしていたので本当に楽しいドライブだった。

鬼怒川がだんだん近くなってくると並木道になって、両側の太い木の枝が道の上からかぶさってくるような感じで、真夜中に通過するとそれがヘッドライトに浮かび上がってちょっと二人で怖がったりした。

やっと鬼怒川に着いたが、当たり前にまだ夜だったのでどこかのそば屋かなんかの駐車場に車を停めて仮眠した。
朝、多分そこの店の人だろう、停まっている車の窓ガラスを「ガン!」と叩かれて起きた。

それからどこかの露天風呂に二人で行った。
結構まだ朝だったので、入っていたのはほとんどおじいさんとかばかりだったが、外の冷たい空気に露天風呂のお湯はとても気持ちが良かった。

あんなドライブならまたしてみたい。
今でも忘れない楽しいドライブだった。

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コメント

それって俺の事かなぁ。
そんなこと、あったかな。
よくおぼえてるな。
でも俺かも知れない。
あの頃は、思ったら、これが正しいと信じて疑わなかった。
もちろん、人に迷惑をかけないというルールの下にね。(ね、わに)

○ガッツさん
久しぶりです。
やっぱり迷惑はかけた人のほうが覚えていない、ということですかね。
あるいは、こんなことが多すぎて、ということ?

でもまあ、楽しかったのは確かです。

次は別の人と。( ̄∇ ̄*)ゞ

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