アーチェリー・ブラッサム
春になると思い出すのが大学時代にクラブ活動でやっていたアーチェリーの試合だ。ちょうど関東大学リーグ戦が3月末から5月初頭にかけて毎週日曜日に各大学を会場に行われる。当時も日曜日ごとに毎週早起きして、試合のたびに違う駅の集合時間に遅刻しないように電車に乗ったものだ。また今年も日曜日ごとに人知れず地味に行われるに違いない。
大学に入学すると、今までの中学や高校とは雰囲気がまったく違って華やかな世界に入ったことを実感した。まあ黒い学生服を着た男しかいない男子校だったせいもあるので、女の子が同じ学校内を歩いているだけで舞い上がっていたのかも知れない。
とりあえず健康診断で医者に「運動したほうがいいね。」と言われたこともあり、また、せっかく大学に入ったのなら何か運動をしてみたいとも思っていたのでいくつかのサークルの勧誘に乗せられて見て回った結果、なぜかアーチェリー部に入っていたのである。
これは多分に勧誘してくれた女の先輩がかわいかったからという極めて不純な理由が1番目か2番目にくるわけなのだが、まあ結局そういう人が多数だろう。違う?違うか・・・。余りに否定されると青春を否定されるようで惨めな気分になってしまうのでまあ理由は人それぞれということにしておこう。
さてこのマイナースポーツであるアーチェリーだが、1点から10点まで5色に色分けされた的に向かって矢を放ち、その得点を競うという極めて単純な競技である。単純に点数を集計するので、連続10点だとボーナスがつくとかそんなボウリングのダブルのようなものはない。
これはきつい。
何がきついって全部自分の責任なのである。しかも客観的な点数が明確に出るので、今日は調子が悪いが一生懸命走って食らいついてやろうとかそんな精神論を打ち砕く冷酷さで集計されていく。最後まで走ったが相手のほうが力が上だったとかそういう問題ではないのだ。相手なんか関係ない。とりあえず自分の点数を根気良く積み重ねていくことが重要で、駆け引きとかそんなものはないのだ。(失礼、これは上のレベルでは若干違うのかも知れないが。上のレベルに達したことがないので不明である。)
矢は当時はアルミ製だったが現在の材質はカーボンのようだ。これを、いろんな棒がごつごつとついていてまるでヒーローものの秘密兵器のような弓に張った弦につがえて人差し指と中指ではさみ、更に薬指を添えて3本の指で引くのだ。サイトと呼ばれる照準器がついているのでこれで的を狙って射るのである。ごつごつついている色んな棒は、バランスをとったり衝撃を吸収したりというような役目を果たしている。放った矢は、そりゃもう驚くくらいのスピードで的に向かって飛んでいく。もちろん人間に当たればアウトだ。手や足なら貫通する威力は持っている。(良い子のみんなは絶対にやらないようにね。)
しかしこのスポーツは華がない。見ていてなんだか良く分からない。まず一般人として見ている人は裸眼で何点かを判別できない。真ん中に当たっても学生レベルでは結構喜んだりするのだが、上のレベルになればなるほど全く動じなくなるのである。(オリンピックの山本選手を思い出そう。)ここが勝負どころというような盛り上がりの場面も学生レベルではない。国際大会ではいろいろ工夫してなんとか面白さを演出しようとしているが残念ながら盛り上がりに欠けるのは否定できない。
アーチェリーは見るスポーツではなくやるスポーツなのだ。自分が弓を持って矢をつがえ、ゆっくりと的の方向に顔を向ける。両側には桜の花が咲き、視線の先には色鮮やかな的がある。桜の花びらがちらちら舞う中を、引き絞った弓から放たれた1本の矢が空気を切り裂いて飛んでいく。真ん中の10点に当たって盛り上がる応援の声。(応援というのが学生の試合にはあるのだ。これがちょっとこっぱずかしいものではあるのだが・・・。)そして応援に向かって振り返り、ガッツポーズを繰り返す。
4月の学生リーグのアーチェリーとはこんなものだったと思う。そこではちょっと地味目の青春が小さな花を咲かせているのである。(松田聖子に勝手に捧ぐ。)
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コメント
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あーちぇりーぶらっさむに思わず反応し、コメントするという一線をついに超えてしまった、とっきーです。本日仕事ですが、数年ぶりに東横線沿線の丘陵を訪れました。目をつぶると今もなお目の前を横切っていった矢がまぶたに浮かびます。風の強い春の日でした。
ほうくさん あの矢どこにいったんでしょうね。
(人間の証明より)
投稿: とっきー | 2005/03/16 22:49
ついにやってきたね、とっきー。
あの風の強い日、ぼくたちの矢はばらばらになっていった・・・。
まるでその後のぼくたちのように・・・。
ってことではないですが。
コメントありがとう。
また機会を作って会いましょう。
投稿: ほうく | 2005/03/16 23:37